十歳の春
シイエの目はいつもにましてきらきらとしていた。「ね、おかやん。はよう助役さんの所に言うてきてよ!」 「そげん急には行かれんとよ…色々話もせんばいかんけんね、そいになぁ…隣のヨッコちゃんも一緒にってね助役さんが二人は仲良かけんて言うてくれたごた…
いつも花を枯らしてしまうシイエ。見兼ねたおかやんがシイエを諭す。 「シィエがそげんするけんか花がかわいそうかやろ?」 「そうばってん…ここにも植えたかと…どげんしたらよかと?」 シイエはただ好きな花に囲まれて暮らしたいだけなのだと涙ながらに訴え…
春は香りから始まる。今日も潮の香りが心地よい海風となり黄色い段々畑を吹き上げてゆく。ぽかぽかと暖かくなったそんな春の日でした。 「シイエー、シイエー」 シイエを呼ぶおかやんの声が聞こえる。 「シイエー!あの子はまた仕事ほったらかしてどこ行った…