戦後70年 原爆の日を前に

【田舎の花~原爆を生き抜いたシイエ】を無料でお読みいただけます。カテゴリーを下より順にご覧下さい。My father is a victim of nuclear weapons.

原爆の惨劇

原爆の惨劇 六

何をみても平気だと、そう思う事でシイエは自分自身を支えてきたのかもしれない。しかし、時折言い知れぬ恐怖心がシイエを襲っていた。 上空で米軍機が旋回を続けている。そのときシイエには憎き敵という感覚は不思議となかったものの、ただただエンジン音…

原爆の惨劇 五

このままここに居ても自分らもあの人のようになる。息子も死んでしまうかもしれない… そんな思いにかられシイエは立山の病院を目指した。息子二人を抱えて歩ける政雄を励ましながら病院を目指す。「少し川で休んでいこうか…」 土手から川を覗き込むと、川に…

原爆の惨劇 四

やっと下まで降りてきたシイエは人影をみつけた。そこは小さい防空壕で、何人かの生き残った人達が身を寄せあっていた。 その人らもシイエ達を見るとてまねきをした。近付くと初義のために場所を開けてくれたが、あまりの悪臭にシイエ達は激しく嘔吐した。 …

原爆の惨劇 三

泣き声を頼りに義輝を探すシイエ。あの瞬間、確かにその腕に抱いていた。泣き声は床下から聞こえていた。 シイエは狂ったように瓦礫を掻き分け義輝を引っ張り出した。まだ生まれて二か月の義輝は首が座っていない。義輝の首は背中につくかというくらいに曲…

原爆の惨劇 二

その日はとても暑く、昼近くなりシイエは義輝にお乳を与えていた。政雄と初義は相変わらず木の上で勉強中だった。 シイエは遠くでサイレンの音を聞いた気がした。「空襲?いやまさか…」 警報は解除されたばかりだった。広島の記事に過敏になりすぎているの…

原爆の惨劇 一

しばらくしてシイエは仕事に復帰した。休んでいる暇などなかったのだ。 朝二人を学校へやりそれからお店へ向かい、シイエの留守中はハルが義輝の面倒をみていた。初五郎がいない中シイエは稼ぎ頭なのだ。 やがて子供らも夏休みに入り二人でハルの手伝いや勉…