戦後70年 原爆の日を前に

【田舎の花~原爆を生き抜いたシイエ】を無料でお読みいただけます。カテゴリーを下より順にご覧下さい。My father is a victim of nuclear weapons.

夢にまで見た暮らし

夢にまで見た暮らし 三

おかやんが少し寂しげに呟いた。「おまえがお産の近うなったら行くけんな」「ありがとう、おとやんもおかやんも体に気をつけてね」 すぐに会えるのだからと、挨拶もそこそこにシイエは田舎を後にした。 長崎に戻るとハルがひとりで家を守っていた。またみん…

夢にまで見た暮らし 二

初五郎は本当に嬉しかった。しかし素直に喜べない自分もいた。「すまない…」「なぜあやまると…喜んでほしか」「嬉しか…嬉しすぎて震えとる…ただお前は初産だ…不安もあるやろう…なのに自分は」「あんたはお国から呼ばれたとやけん…大丈夫!立派に産んでみせ…

夢にまで見た暮らし 一

新しい暮らしが始まってもシイエは店の仕事は続ける事にした。 初五郎が戦場に行くことになっても、家族となったハルや政雄、初義を自分が守らねばと感じていたからだ。そのために少しでも貯えが欲しかったのだ。 二人の子供もすぐにシイエをお母さんと呼び…