夢にまで見た暮らし
おかやんが少し寂しげに呟いた。「おまえがお産の近うなったら行くけんな」「ありがとう、おとやんもおかやんも体に気をつけてね」 すぐに会えるのだからと、挨拶もそこそこにシイエは田舎を後にした。 長崎に戻るとハルがひとりで家を守っていた。またみん…
初五郎は本当に嬉しかった。しかし素直に喜べない自分もいた。「すまない…」「なぜあやまると…喜んでほしか」「嬉しか…嬉しすぎて震えとる…ただお前は初産だ…不安もあるやろう…なのに自分は」「あんたはお国から呼ばれたとやけん…大丈夫!立派に産んでみせ…
新しい暮らしが始まってもシイエは店の仕事は続ける事にした。 初五郎が戦場に行くことになっても、家族となったハルや政雄、初義を自分が守らねばと感じていたからだ。そのために少しでも貯えが欲しかったのだ。 二人の子供もすぐにシイエをお母さんと呼び…