別れ…そして長崎へ 一
シイエは今までどんなに叱られてもやらなかった家の仕事を一生懸命にこなした。おかやんと離れたらもう手伝いたくても手伝えないのだ。
シイエは幼いながらも今できることをしておきたいと考えたのだ。畑から帰ったシィエとおとやんはこんな会話を交わした。
「シイエ…長崎なんざ行かんでよかとぞ?こんままで充分暮らしていけるとぞ」
「おとやん、うち考えたばってん長崎行くばい。行きたか…たくさん見た事のなか花のあるとげな…」
「シイエは花ば好きやけんなぁ…おまえがよかならおとやんはもうなんも言わん」
毎回娘を奉公に出す度におとやんは辛い想いをしていた。
おとやんは淋しい気持ちを抑えるのに必死だった。
「シイエ…行く事にしたんなら教会に行って神父さんにもお別ればゆうてこいよ」
「わかった…ヨッコちゃんと二人行ってくるけんね」
シイエはヨッコちゃんと二人神父さんの元を訪れた。仲のよい二人がいつも一緒に通った教会だ。
次にいつ教会に来れるかわからないと思うと二人は少し淋しい思いがした。