別れ…そして長崎へ 二
足どりも軽く、教会を訪れたふたり。
「神父様~こんにちは!神父様~」
シイエ達が呼ぶ声に教会の奥から笑顔で神父様が現れた。神父様はまだ幼い女の子二人を前にしてうなづきながら口を開く。
「来たな…二人とも」
神父様は今日ふたりがどんな用で来たのかはわかっていた。神父様もまたおとやん同様、幼い娘達が奉公に出なければならない現実に心をいためておりました。
男手は兵隊として国に取られ、貧しい田舎では食いぶちを減らすために泣く泣く娘を手放す。神父様は親の涙も子の涙も嫌というほど見てきていたのです。
そんな神父様の心情など幼い二人は知るよしもなく…
「神父様…私たち二人今度長崎に行くことになったとです!もう教会のお手伝いができません…おゆるしください」
「よかよか…やっぱり行くとか…」
神父様は今まで何人もこうして娘達を送り出しては自分の無力さに涙し、せめて奉公に出た娘達の幸せをと…ただただ毎日祈りを捧げるしかなかったのだ。
奉公に出るというのに希望に満ちた表情の二人に、長崎にはたいそう美しい教会がある事を伝えた。
「大浦という所に教会がある…それはそれは綺麗な教会たい…二人でその教会へ行きなさい、そして祈りなさい…きっと仕事もうまくいくやろう」
神父様の言葉に二人の顔はますます輝きを増した。
「神父様!ヨッコちゃんとふたりミサにも行きます!ヨッコちゃん綺麗か教会ってよ楽しみかね早く行きたかね」
「うん早う綺麗か教会ば見たか~」
この村はほとんどが熱心なカトリック信者であり、二人ともそれが当たり前として今まで暮らしてきた。シイエは大好きな花と美しい教会で頭がいっぱいだった。
それから幾日かして長崎から迎えがやってきた。シィエ達二人は村の皆の見送りを受け、
「いってきます」
と明るく手を降って笑顔で田舎を後にした。