奉公と長崎の町 二
奉公先である花屋に到着した。
「花幸」
「旦那様ただいま戻りました」
「花幸」
掲げられた看板にはそう書かれていた。
はじめにシイエ達を迎えたのは色とりどりの美しい花々だった。田舎ではみたことがない美しい花がたくさんの桶に入って店先に並んでいる。
「うわ!綺麗か花のいっぱいあるっ何の花やろうかヨッコちゃん」
「田舎では見た事なか花ばっかやね」
「おかやんが言いよったごと長崎にはいっぱい知らん花のあるとね」
長崎に着いてからシイエ達は目が回るくらい興奮の連続だ。目に飛び込んでくるものすべてが珍しくて仕方がないのだ。
番頭さんは奥に向かって声をかけた。「旦那様ただいま戻りました」
奥の部屋から旦那様と奥様が二人の子供を連れて出てきた。お手伝いさんであろう女性が番頭さんに声をかける。
「番頭さんおかえりなさい、そしてあなた達も…きつかったでしょうね」
そして奥様が穏やかな表情で口をひらいた。
「お疲れ様ご苦労でしたね番頭さん」
「いいえ、二人を無事に連れて帰りました」
シイエ達は横でぺこりと頭を下げた。旦那様の目が少し怖いと感じながら…