長崎での暮らし 五
三人は昼過ぎに店へ戻ると奥様とおキヨさんが忙しくしていた。
「すいません遅くなりまして…すぐに仕事に戻りますから奥様は休まれてください」
番頭さんは慌ただしく前掛けを腰にしばりつけると店へ出て行った。
「番頭さん、配達が一件あるからそっちをお願いしますね」
「はい!いってまいります」
番頭さんは花束を抱え慌てて店を飛び出した。
シイエ達は今日見た事を話したくてうずうずしている。「楽しかったですか?二人とも、どこまで行きましたか?」
「はい!色々連れて行ってもらいました!珍しかとこばっかりで…ねーヨッコちゃん」
「ちゃんぽんも食べたもんね!丸山にもいったねシイエちゃん」
「おかっつぁまが二人ともうちに来いって言うたもんね」
興奮状態で二人はしゃべり続けた。
「舞妓さんにしてやるって言われたもんね」
「あら、おかっつぁまたらそんな事…しょうがないわね」
「奥様は売れっ子の芸者さんだって聞きました」
「わっどうしましょう…」
奥様が思い出し笑いを浮かべるとおキヨさんが止めに入る。
「そんな事言うもんじゃなか!」
「いいのよ、おキヨさん」
「すいません…奥様」
おキヨさんはシイエ達のために頭を下げた。
二人の話はみてきたものをすべて吐き出さないとおわりそうにない。
二人の話はみてきたものをすべて吐き出さないとおわりそうにない。
「あと…大浦の教会にも行ったんだけど番頭さんもカトリックかな?私達と同じように祈ってたもんね」
「そうなの?おキヨさん知ってる?」
「いいえ…なにも」
「今は教会行きよらんて言うてました」
「どうしてかしら…行くといいのにね」
全て話し終えて二人は満足気だ。
「疲れたでしょうね、一休みしたらおキヨさんの手伝いを頼みますよ」
そう告げると奥様は奥の部屋へと入って行った。