出会い 二
シイエ達は仕事を終え、お嬢様のおかよと三人で稽古にでかけるのが日課となっている。三人で出掛けるのが忙しい毎日の中楽しみのひとつであった。
「おかえりなさい、どうしたの?楽しそうね、なにかあったの?」
その日も稽古の帰りにまたあの男性と出会う。シイエと彼は二言三言交わして別れた。
「ヨッコちゃん…あの人誰なの?よく会うけどシイエちゃんの知り合い?」
「あのね、かよさんあの人は…言っていい?シイエちゃん」
「ダメ!まだなんでもないんだから」
「え!何?私にも教えてよ知りたいっ」
おかよがヨッコに詰め寄る。
「シイエちゃんの好きな人」
ヨッコの言葉にシイエは真っ赤になって後ろを向いた。
「あ~もう…言うてしもうた」
奥様がシイエ達を娘のように大事にするように、おかよも二人を妹のように大事に思っていた。若い娘達の会話である。
三人でいる時には「立場」を気にする雰囲気など微塵もなかった。
三人はシイエの恋の話で楽しそうに店に戻った。そんな三人をみて奥様が尋ねる。「おかえりなさい、どうしたの?楽しそうね、なにかあったの?」
「あのね?お母様、シイエちゃんのね…」
「ダメ!言わないでっ」
「シイエちゃんがどうしたの?」
「好きな男の人がいてね、今日会ったの」
「まあ…シイエちゃんにそんな人いたの?どんな人?」
「奥様が亡くなられたばかりなのに子供が二人いて自分で育ててるんですって」
おかよがすらりと話す。シイエは恥ずかしくて下をむいてしまった。
おかよの話を聞いて奥様はぴんときた。
おかよの話を聞いて奥様はぴんときた。
「あ~あの人ね…」
「え!お母様知ってるの?」
「お母様が若い頃おかっさまのとこにお世話になってた時に源さんって人がよく連れて来てたのよ…それで奥様が亡くなられたと聞いてこの前行ってきたの」
「あの時のお葬式はあの人の所だったんですか…」
シイエがつぶやいた。
「でもあの人はシイエちゃんより随分年上よ?」
「そのようですね…でも私がひとりで勝手に思ってるだけですから…」
シイエの精一杯の強がりだった。