再会 一
初義は小さな体でがんばって生きていた。時折うわ言のようにつぶやいている。
「おとうちゃん…」
「おとうちゃん…」
シイエは絞り出すようなその声を聞く度に胸をつまらせる。
「おとうちゃん会いたかねぇ」
初義に聞こえてるのかわからないまま少し大きな声で一生懸命話しかけた。どうしても会わせてやりたい…願いは届くのであろうか。
その頃の初五郎は任務の真っ直中のはず。帰ってくるはずもない。シイエは初五郎が遠い土地にいるものと思っていた。
初五郎はその時戦地での任務を終え、佐賀の兵器工場の工場長に就任したばかりだった。帰国してすぐに、一旦自宅に戻る許可を受けた矢先の原爆投下であった。
初五郎は長崎に原爆が落とされたと聞き居ても立ってもいられない。夢中で部隊長に詰め寄った。「行かせてはもらえませんか…妻が…妹が…息子らが自分を待っているかもしれないのです」
「長崎はもうダメだ…焼け野原でなにひとつ残ってはいないそうだ、お前の家は城山だったな…残念だが、浦上は壊滅…城山と松山にも生き残りはいないと聞いている。」
行く事を止められ一度は引き下がるも、やはり仕事など手に付くはずもない。
「なにもなくともかまいません!自分の…この目で見るまでは納得がいきません」
あの子らが死ぬなど考えたくもない。初五郎は周囲の制止を降りきり、幾度となく持ち場を離れる事を頼み、ようやく聞き入れられた。