再会 六
シイエはしばらくして炊き出しの芋を少し抱えて帰ってきた。初義はあまり口を開けられない。シイエはやわらかくふかした芋を小さくちぎって初義の口元へ運んだ。
「ほら!はっちゃん食べてごらん」
「ほら!はっちゃん食べてごらん」
初義は口を少しあけ二口だけ食べた。
「もうよかとね?」
「うん…あとで…」
シイエは残りの芋を初義の手に握らせて手を離した。そのやりとりが初義の最後の言葉となった。
小さな芋をにぎりしめ…初義はそのまま動かなくなった。
これまでも何度かこういう事はあった。死んでるのかと思ってもいつものように息だけしてるんだ、眠ってしまったんだ…
これまでも何度かこういう事はあった。死んでるのかと思ってもいつものように息だけしてるんだ、眠ってしまったんだ…
でも今回は違った…シイエは認めたくなかった、またいつものように初義の口元に耳をつけ呼吸を聞き安心しようとするも…呼吸は聞こえない。
「はっちゃん?はっちゃん…」
シイエは呆然と初義の顔に触れ、芋を握るちいさな手を包み込んだ。
全てを悟った初五郎はだまって外に出た。あまりの状況に体を支えられず崩れ落ち呆然と立ちすくんだ。しばらくして身悶えするほどの悲しみが初五郎を襲う。
「うぉーっ!!!」
病院の壁が初五郎の血で染まっていく…初五郎は感情をおさえきれずぼろぼろになるまで壁を殴り続けたのだ。痛みなど感じなかった。しかし、魂は今にも引き裂かれんばかりになっていった。
初義は初五郎の帰りを待っていたのだ。初五郎との再会を果たし安心したかのような最後だった。 まだ学校へ行き始めたばかりだった初義、いつも皆を笑顔にしてくれた初義、そして…誰よりも原爆を恐れた初義。
知らぬうちに戦争も終わり…八月最後の暑い日だった。
初義は、たった六年という短い生涯を終えた。
初義は、たった六年という短い生涯を終えた。