悲しみの再出発 五
暗くなりかけた道シイエは急いだ。早く初五郎に話がしたかったのだ。
今は生き残った者で家族を、人生を、そして町さえも再構築するしかないのだ。立ち止まっている暇などない。
「あんた…また、前のごと…普通に暮らせるとやろか…」
「わからん、そいばってん、やるしかなか」
シイエは無意識に唇を噛んでいた。固い決意の現れである。どれだけ苦労しようとも、あれ以上の苦しみはないのだからと。
「ただいま…」
「奥様は…元気やったか?」
「うん…だいぶ痩せとったばい…旦那様も番頭さんもおらんで…お店の奥の部屋が空いとるけんそこに住まんかって言われた…あんたにも源さんが仕事頼みたからしか」
「旦那様と番頭さんがか…原爆か?」
「そうみたい…」
「奥様も辛いだろう…なんにしろ仕事があるのは有り難い、仕事なら何でもする…早く話しに行こう」
「それなら奥様のとこでお世話になろうか?」
「そいはよかばってん…なるだけ早うしよう、よかごと話するけん少し待っとけ」
シイエの気持ちは決まっていた。またあの店で花に囲まれて働きたい、その想いが強かったのだ。
「あんた…また、前のごと…普通に暮らせるとやろか…」
「わからん、そいばってん、やるしかなか」
シイエは無意識に唇を噛んでいた。固い決意の現れである。どれだけ苦労しようとも、あれ以上の苦しみはないのだからと。