復興 二
奥様は本当に自分の娘の事のように喜んだ。
「ここもにぎやかになるわね…私も元気を出して働かなきゃ」
二人は嫁いで行ったおかよにも子供が生まれると聞かされた。奥様は興奮気味に話を続ける。
「かよにもヨッコちゃんにもシイエちゃんにもまだまだ生まれるのよ!みんな私のかわいい孫達だわ…私も忙しくなるわね」
「奥様ってば…」
久しぶりに花幸が幸せな雰囲気に包まれた。
「そうだわ!今日はヨッコちゃんのお祝いをしましょう久しぶりに皆を呼んで楽しく食事をしましょうね」
シイエにも久しぶりに力が湧きあがり、おキヨさんと一緒に早い時間からたくさんの食事の支度におわれた。
花幸で宴席の支度が進んでいるその頃、眼鏡橋辺りでよろよろと力無く歩く一人の男の姿があった。 服はボロボロでやせており、顔は泥をかぶったように真っ黒である。戦後間もないこの時期にはそのような風貌の人は珍しくはなく、誰も気にもとめない。
男は花幸から少し離れた場所から花幸をじっと見ていたが、時折花幸の前まで行っては考えるような素振りをしてまた離れるという事を繰り返していた。