復興 六
あれほど笑いに包まれていた宴席だったが、一瞬にして沈黙に包まれた。
しばらくは誰一人言葉を発する事ができなかった。源さんが沈黙に耐えきれないように口を開いた。
「番頭さん…よく生きていてくれた、これからは旦那の代わりにこの店を盛り上げて欲しい」
「はい…」
「まあ飲め」
源さんは番頭の盃に酒を注いだ。そばにいたヨッコが源さんの盃に酒を注ぐ。一部始終を呆然と見ていたぼっちゃまも、番頭の手をとった。
源さんは番頭の盃に酒を注いだ。そばにいたヨッコが源さんの盃に酒を注ぐ。一部始終を呆然と見ていたぼっちゃまも、番頭の手をとった。
「おかえりなさい番頭さん…いろいろ教えてくださいね」
「ぼっちゃま…ご立派になられて」
「シイエさんと同じ事言わんでくださいよ」
「いいえ…本当に…私でよければ力を尽くしますのでなんでも言ってください」
「お願いしますよ番頭さん…頼りにしてます」
番頭は責任の重さに一瞬たじろいだが、店に受けた恩を返す好機だとすぐに思い直し、ぼっちゃまの手を強く握り返した。
しばらくして奥様が目を腫らし出てきた。番頭の前に膝をつき、顔を見据えて力強く言った。「番頭さん…よくぞあの人を連れて帰ってくれました…ありがとう…こんなになるまで探してくれて…本当にありがとう…今日はあなた達の赤ちゃんのためのお祝いだから…あなたも父親になるんですからしっかり働いてくださいね」
「とんでもない…こちらこそお願いします」
奥様は袖で残っていた涙を力強く拭き取ると立ち上がった。
「皆さん!明日主人のお葬式を出します皆で送ってやってくださいね」
奥様は何かふっきれたように見えた。遺された者で前を向いて強く生きていこう、その想いはそこに居る者全てが強く感じていた。
宴会が終わる前から源さんは自分が葬儀を取り仕切ると決めていた。
「お幸…俺にまかせろ!初…シゲ頼んだぞ」
宴会が終わる前から源さんは自分が葬儀を取り仕切ると決めていた。
「お幸…俺にまかせろ!初…シゲ頼んだぞ」
「はい!」
翌日の葬儀はそれは盛大なものだった。
「皆様本日は本当にありがとうございます、主人も安心したと思います…私も少し休むとしますかね…シイエちゃんとヨッコちゃん夫婦がいることだし…」
「いけません奥様!まだまだ私達の見本になっていただかないと!ねっシイエちゃん」
「そうよお母様…まだ私の赤ちゃんだって生まれるんですからね」
かよも奥様に詰め寄った。皆で顔を見合わせて笑い、ようやく以前の奥様らしさが戻りつつあった。