田舎の花 一
皆でこれからの事を真剣に話し合った。シイエは自分で花を作り売るという夢を諦めてはいないと、この時初めてヨッコに話してみた。
初五郎は源さんの仕事がますます忙しくなり、その手伝いに走り回っている。
街も少しずつ片付き、人々に花を愛でる気持ちが戻りつつあり、シイエは田舎の花を長崎の人にも見せたいと考えていたのだ。
田舎の花にはそれにしかない魅力がある。スミレに山蘭…街では見掛けない花がたくさんあるのだ。シイエはこれをどうやって増やすか、そしてどうやって売るかあれこれ考えを巡らせていた。
シイエはまず店にある花の苗を土で固めた。そこに苔を巻き付け苔玉を作って店先につるしてみた。「これは…シイエちゃん売れるかもしれん」
暮らしの中にささやかな癒しを人々は求めていた。苔玉はその手軽さからひとつ、またひとつ売れて行った。
シイエは思った。
「これなら場所を取らずに田舎の山を再現できるかもしれない」
シイエは田舎の花を一度見に帰る事にした。