さようならシイエ 二
いつものように自転車にまたがりゲートボール場を目指すシイエ。いつものように仲間と笑い合い、穏やかな時間が過ぎていった。
シイエは広場の真ん中に突然倒れ込んだ。シイエ二度目の癌の発症である。この時初五郎の死から12年が経過していた。
近くには義輝家族が住んでいた。義輝からの知らせを受けた兄弟が集まった。診断の結果は大腸癌、十日後に手術で取り去ろうという話だった。また命は助かるだろうとその時はみな考えていた。
近くには義輝家族が住んでいた。義輝からの知らせを受けた兄弟が集まった。診断の結果は大腸癌、十日後に手術で取り去ろうという話だった。また命は助かるだろうとその時はみな考えていた。
昨日まで元気に飛び回っていたのだから…
手術当日、考えられなかった事が起きる。開腹した医師は我が目を疑った。わずか十日のうちに信じられないスピードで癌は進行していたのだ。手術を決めた日には切除できるはずだった箇所は周りの臓器ほとんどに転移していた。「残念ですが手を付けられないまま縫合させていただきました…」
医師の言葉にその場にいた息子達と孫達は肩を落とした。
「余命はもっても三か月です」
「余命はもっても三か月です」
きっぱり言い放たれた家族はシイエに告知をしない事に決めた。しかしシイエは悟っていたのか…
「家に帰りたい」
そうつぶやいたのだ。開腹の傷がふさがった頃、シイエは待ち望んだ我が家へ戻りその疲れた体をよこたえた。