さようならシイエ 三
自宅に帰ると孫達、仲間達が次々に訪れた。体調を気遣い短時間で切り上げる者が多かったが、その度にシイエは寂しげな表情を浮かべた。
それから約一か月、シイエは最後の時を迎える。自宅で意識を失い救急車で病院に搬送された。
シイエの人柄からか、明るく送ってやろうという空気があった。
それから約一か月、シイエは最後の時を迎える。自宅で意識を失い救急車で病院に搬送された。
死の直前シイエの体は激しく痙攣した。知らせを受けて集まったシイエの息子達娘達そして孫達がシイエがベッドから落ちぬよう全員で支えた
「ばあちゃん!がんばって!ばあちゃん!」
涙を流しながら叫ぶしかなかった。ほどなくしてシイエの痙攣は治まりそのまま呼吸が止まった。
シイエ76歳、こうして波乱万丈な人生は幕を閉じた。
シイエの告別式当日、シイエの孫娘達が螺旋階段を登り、控え室を目指していた。「なんね?この人の多さは、階段は花だらけやし歩きにっかこと」
告別式はしめやかに…いや…賑やかに行われていた。
たくさんの花を見ながら、孫達はシイエの言葉を思い出していた。
たくさんの花を見ながら、孫達はシイエの言葉を思い出していた。
「金のなからな笑いきらんもんはかわいそうかね…札束は棺桶に入れたら燃えて無くなるとばい…」
保険金殺人のニュースを見てシイエがつぶやいた言葉、まさにその通りである。馬鹿正直に最後まで貧乏生活を笑顔で続けてきたシイエが築いた財産がそこにはあった。
シイエが愛したたくさんの花達、そして涙を流す人の数、シイエがたくわえてきたのはまさに死んでも持っていける「想い」だった。
葬儀の空気は独特であり、悲しみと無意味な笑いが交互に繰返される。笑っていないと皆一様に悲しみに飲まれてしまうため、一人になる事を避けるのだ。
葬儀の空気は独特であり、悲しみと無意味な笑いが交互に繰返される。笑っていないと皆一様に悲しみに飲まれてしまうため、一人になる事を避けるのだ。
「シイエちゃんお疲れ様」
「かあちゃんありがとう」
「ばあちゃん…じいちゃんに会われたかな…」
シイエの人柄からか、明るく送ってやろうという空気があった。