長崎での暮らし
三人は昼過ぎに店へ戻ると奥様とおキヨさんが忙しくしていた。「すいません遅くなりまして…すぐに仕事に戻りますから奥様は休まれてください」 番頭さんは慌ただしく前掛けを腰にしばりつけると店へ出て行った。「番頭さん、配達が一件あるからそっちをお願…
シイエはふと田舎の神父様の話を思い出す。そうだ!教会だ!教会へ行けば姉ちゃん達に会えるかもしれない… シイエは番頭さんに話を切り出した。「ね、番頭さん田舎の神父様が大浦ってとこに綺麗な教会があるって言いよったとけど…どこか知らんですか?」「…
丸山で一軒目のその料理屋には大きな庭があり、きれいに花を生けた花瓶がおかれている。見たこともない広い玄関を二人はきょろきょろしながらくぐり抜けた。「おはようさんです!おかっつぁま花幸でございます新しい奉公人のご挨拶に伺いました」「はーい」…
食事も終わりに近付き奥様が口を開いた。「食事が終わったら番頭さんと一緒にこの辺りを教えてもらいなさいね。ゆっくり回ってらっしゃい」「得意先回るとも忘るんなよ」 旦那様も番頭さんに言った。「はい…旦那様わかっております」 二人は店を出て近所の…
朝の光が二人の少女の顔を眩しく照らす。長崎での暮らしが始まったのである。「うーん…シイエちゃん起きらんばばい」「うん…わかっとるばってんさぁ…布団の気持ちよかけん起ききらんとさね」「そうさね、これから寝るとも楽しみになるばいね」 布団の中でそ…